ゆるゆる物書きのセルフ反省房

ひょんな事から物書きを始めてみたよじかむという人が、七転八倒する日々を綴るブログ

犬王を見たおーというにっきですおー


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2021年製作/97分/日本

 

実在の能楽師・犬王をモデルにした古川日出男の小説〝平家物語/犬王の巻〟を映像化したもの、だそうで。

丁度アニメ平家物語を同じ制作会社が作っているから履修してから来いってことなんだろうなあ。

そうしよ✿

数週間が経つ。

やべえ!何も見てないけど上映終わりそうだ!行かねば。

という事で世界史選択だけど授業はサボりがちなアホの子が行ってきました。

サボってたけど中学で日本史があったような気がするさぼってたけど。

くらいのドアホ。

 

平安の終わりくらいに源氏と平家がやんのかゴルァやんのかオルァして

マーオ
マーオ
(中略)
マーーーーーーーオ!!!!!
ギャフベロハギャベバブジョハバ敦盛事件那須与一ウェイとかの果てに壇ノ浦という海で海戦になり源義経が八艘飛びしたりしたので、詰みになってしまった平家が三種の神器の一つである天叢雲剣とまだ幼い天皇に船から身投げさせたり、負けた平家の恨みがすごすぎてからの柄が人の顔に見える平家蟹が存在してたりとにかく負けた平家の恨みめっっちゃやばい。

くらいを知ってれば(あってるかは知らない)まあ話だいたいわかる感じでした。

 

パンフレットは売り切れだったので解説などを参照もせずにあってるのか的外れなのかわからない感想をだらだら書きなぐって行きたいと思います。

 

誰かと「あああ」とか言いながら感想戦したいけど普通の人に「すっごく良かったです」って薦めるにはグロ多いかなって……

私も得意ではないのですがまあギリいけたけど人には……それぞれ人の……乳酸菌……

 

はい。

ねたばーれもあるーのでまをあけーるよー(インチキ外国人のイントネーション)

 

 

 

 

 

 

オープニングは現代の風景+琵琶法師の語り~過去へ遡るけど源平合戦からは未来にあたる南北朝時代へ~

 

北朝三種の神器めっちゃほしいわー」

 

・なんか明らかにやばい箱(血の手形がべたべたついてる)に封印されていたすごい面をつけたおっさんが踊り狂い、そこんち(そこそこいい家)の奥さんがなんか人間じゃない色のものをズルズルズルッて産む(もうここで耐性ない人は多分ダメ)

 

・壇ノ浦で海中に没した遺物とかを発掘していたっぽい家の子【友魚(ともな)】の父(家が立派なので多分凄腕なんだと思う)が武士の依頼を受けて壇ノ浦に船を出し、天叢雲剣の探索を行い、尺の関係で速攻見つけ、現物確認中の事故でお父さんがスパッとやられてお亡くなり、船に同乗してた友魚も余波で視力を失い、盲(めしい)に。

ぶちぎれたお母さんがなぜか友魚に「お父さんの仇取れ」みたいな理由で友魚を家から出してしまい、旅に出て、途中で盲目の琵琶法師に出会い行動を共にするようになり、琵琶を習い、腕を認められて琵琶法師の座(多分派閥みたいなもん)に入れてもらえることになり座主みたいな人の名前の一文字を貰って【友一(ともいち)】になりーので京都で暮らすことになったのですが

 

そこで名前のない異形の子(でも友一には見えないので畏怖とかなく)と出会い、友達になり、なんやかんやで異形の子が異形なのは平家のことが原因で、世にまだ出ていない平家の悲しい物語を人々の間に広めることで平家の残留思念が昇華され、その時に異形の子――犬王(って自分で名乗ることにした)も元の姿に戻る仕組みになってるんじゃね?ということがわかり

一緒に平家の事を琵琶と能で語ろうぜ!ってなって、友一は決意の証として名を【友有(ともあり)】に変えて快進撃がはじまったりする話。

 

以下もうまとまりのない「あああ」ポイントを綴っていく。

 

表現しゅっき①

友魚が旅に出て琵琶法師に出会うまでのシーンがとても好きでした。

 

普通の映画なら風景があってただキャラクターが歩いて~みたいな感じになると思うのですが、友魚は後天的な盲なので、聞こえてきた音と見えていた頃の記憶を照らし合わせて世界がそれなりに輪郭を持って明るいものに見えてる感じがアニメーションで表現されていてまっっことごっつすっき。

思いついた人しゅき。

正拳で瓦を割りたい勢いで好き。

 

犬王まわりしゅっき。

オープニングでズルズルって生まれてきた子は話を追っていくと能のお家の末子(多分)で途中でお母さんが亡くなって、その家の子供扱いはされてないんだなーそして名前は付けてもらえなかったんだなってことが察せられるのですが、普通なら死ぬほどかわいそうな設定なのですが実家に出禁な訳ではなく、家族から「お前のせいでお母さん死んだんだ!」みたいな感じでめちゃくちゃ忌み嫌われているわけでもなさそうで、都の人に驚かれてはいるけれどやっぱり忌み嫌われているわけではなさそうで、悲壮感がなくなんかのんびりしている。

 

犬王はフライヤーなんかだと人間の形をしていますが、登場時片腕がめちゃめちゃ長くてあとの腕と足は恐ろしく短く、目が普通の場所になくて背中に鱗でなんか色々大変な異形なのですが、異形の部分が人の目に触れないようにはなっていて、自力でできないから使用人とかが布とか切ったり縫ったり紐巻いてあげたり視界確保のために面を作ってあげたんだろうなあとおもうとなんかほっこり……。

 

包まれていればなんか珍妙な生き物でかわいいのです。

 

人から遠ざけられている割に言葉遣いとかちゃんとしてるので誰かが教えてたんだろうねみたいな意見を目にして、でもそこまで手間かけるかな……ってこのブログを書きながらずっと思ってたのですがーーー声が……かわいいのであった……。

 

そう、CVがアヴちゃんである。女王蜂というロックバンドの方である。

パフォーマンスを拝見する機会があってまだちょっとしか知らないのであるがドスの効いた凄みのある低音から美しい高音まで声の幅が広くてかわいい時の声がくそかわいくていらっしゃってかわいい時の声で

 

「ねえ、あそこの人畜無害なおじさんのヅラかっぱらってきて♡」

 

ってねだられたら二つ返事で従いたくなるし、褒めてほしいのでおかわりされる前にあらかじめもう二人位無辜のおじさんのヅラむしり取って献上したくなるかわいさというか(どんな)

 

最初にでてきた犬王は少年なのでそのかわいい時のアヴちゃんの声で更にそれより前の幼児期はあどけなくかわいい声だからそりゃバレないようにみんなこっそり甘やかすわ……なんか聞かれたら教えてあげるわ……あまり歪まないで澄んだ心に育つわ……と謎い納得をしております(※多分公式設定と大きく違います)

 

能の稽古をつけてもらってはいないが稽古を見ていたのと本人の持ち前のセンスで、自分の周りにいた平家の残留思念たち(かわいい)からまだ世に出ていない物語を聞き取り、自分で歌を作り歌い演出し能として上演するのですが、出来上がったものは能というよりはハチャメチャに傾いていらっしゃるんだけどまだ歌舞伎ないので、実家の分派みたいなかんじで民衆には認識されていく。

 

曲が……ロック……ふるめなロック……

制作陣ドンピシャ世代とかなのかしらというロック。

まあとにかくアヴちゃんの歌がうめええええええ。

三曲ある演目の二曲目までの演出も当時の技術ですげえ頑張ればギリ出来るかもしれないと思わせるような見せ方をしてておおーって。

 

ちゃん友さあ…

友有を演じている森山未來の演技と歌が上手いことはわかる(琵琶法師の独特の語りもうまい)のだが、友有のキャラが薄いせいで宣伝でうたっている相棒とかバディではない、添え物感出ちゃってるのがちょっと惜しい。

 

持ち歌が一曲しかないのである。歌詞は違うけど。

最近の音楽よりスローペースに感じる曲でそれが3回(たしか3回)あって闇の天丼で話の流れがもったりになってしまい、犬王が舞台の奥行きや高さを生かして曲ごとに見せかたをバンバン変えて人を心酔させる一方で友有は

 

なかまをふやした

火を噴く人を加入させる

脱ぐ

いささかすけべ感(?)のあるパフォーマンス

変な服を開発した

肩に有って書いた☆

V系にめざめた

 

子供が中二病に目覚めたのを見守らないといけないお母さんてこんな気持ちかな……

といういささかしょっぱい気持ちに。

 

お姉さんにモテモテで遊び散らかしている描写も友有だけあって、犬王と二人でロールスロイス(まだ牛車?)にねーちゃん侍らせてるならなんか相棒感あるんですが、多分一方その頃犬王は美術さんと滾々と話詰めてんだろうなっていう……(個人の妄想です)

 

日本三大彼氏にしてはいけないBのつく職業の元祖(※琵琶法師)と化してたのちょっと悲しくも草。

 

犬王は同じ演目を二度やらない→犬王が聞き出した話を友有が作った新しい座の仲間が日本全国津々浦々までお届けするぜって発案したという偉業もあるので、その常人にも歌えるようローカライズした歌とかがほしかったです……

 

竜中将

作中で披露された犬王が作った三曲のうち最後の一曲。

評判が幕府まで届いたことで将軍の御前で披露することになり、最初は犬王だけが招集されたのですが、友有も一緒にと犬王が推し、初の一緒にオンステージ。

開始前のよくアーティストがやってる円陣組んでウェイに近い事が行われてほっこり。

 

どこから参戦したのか記憶が定かじゃないのですが、この曲は犬王の脇に顔を隠したバックダンサー的なものがいて、それが犬王の兄弟なのでは説があってそこ掘り下げて。ほんと掘り下げて。尺取れ。台詞なくていいから。衣装合わせのシーンとかあって。セット作り終わってみんなでくたくたで寝るシーンとかあれ。

 

この曲だけ森山未來がコーラスで参加しているのですがアヴちゃんの添え物になってないから歌うまいんだなって。曲はサムズアップするフレディが脳裏に浮かぶ感じなのですが舞は軽業・バレエ・コンテンポラリーみたいになっていって圧巻。

進行とともに話の伏線回収がされておおーすげー。

 

表現しゅっき②

竜中将の途中で、犬王のパッパが芸事を極めるために呪いの面に手を出し、面から力を受け取る契約をしたことが明らかになります。その対価として平家の隠れ里からまだ広まっていない話を手に入れた琵琶法師を手にかけ、更に母親の胎内にいた犬王を差し出したという事が発覚するのですが、キャラクター同士で「おのれ」みたいのはなく、犬王の舞台を恨めしそうにパッパが見つめてお面に

パッパ「俺よりすごいムスッコ目障りだからムスッコ殺せ」

おめん「いやムスッコはおれがもらったもんだし何言ってんお前殺すわ」

パッパ四散。

みたいななんか人外のやり取りがとてもよかった。面が禍々しいのとても好き。途中で琵琶法師を切り殺した刀から血が漏れ出してカタカタいうシーンもよかった。

ただパッパ四散シーンで目玉だけきれいにパッパがいた部屋の格子をすり抜けて外に出る表現があってホールインワン感出ちゃってて気が散る……眼球のどっかの片が格子に抉られてまったいらとかになってる方がすき。

パッパ登場回数の割に芸への執着などがとても見えてとてもよかったのですが、何かを手に入れた感じがなくて、くたびれもうけ感がすごくて、面ちゃんさあなんの仕事したの……??ちょっと言ってみ……??おこんないから……。

 

そしてこのお面周りの禍々しさに対して序盤に出て来た天叢雲剣引き上げシーンの神々しさがすごかった。友魚のお父さんが剣の入っている袋から本体を抜いた瞬間に金色の円環が広がるように展開してその通り道にいたお父さんが胴ごとスパッと切れてしまった。

神代の武器を常人が手にしたらそうなるよねーわかるわかるうーみたいな圧倒的なやつでした。好き。

 

締めのへん。

竜中将上演前シーン前に映画館にいる観客はすでに将軍が、覚一(友有が入れてもらった琵琶法師の座の一番偉い人)が記した以外の平家物語を勝手に語ることを禁止する御触れを出すことになるのを知ってて「フラグううう……」って胃を痛くして竜中将を見せられ、上演後拍手喝采将軍のお心変わってハッピーエンドとはならなくて、やっぱり犬王の平家物語も規制の対象になってしまいました。

 

その禁を破ったものには罰を処す、となって抵抗していった結果友有座の仲間たちがボコボコにされたりひどい目にあったりしていく。

 

友有がかつての古巣である覚一座に転がりこんでいったところでとうとう追っ手が現れ、座の幹部が「名前を捨てて戻ってくれば咎められない」と説得してくれたのですが犬王が幕府の押しつけを呑んだという話を聞いてさらに激高し、幕府の侍に斬り殺されそうになってしまったところを友有を京都まで連れてきてくれた兄弟子が身を挺してかばってくれて、そこで思いとどまってほしいなと観客はきっと思ったでしょうがやっぱり思いとどまらなかった友有は河原で斬首されてしまいました。

処刑の瞬間まで友有は歌い続けたのですが、最後は自分の事を【壇ノ浦の友魚】と名乗って死んでいく。

 

一方犬王は将軍直々に禁止のくだりを聞いて、異を唱えようとするも「友有を殺す」と脅しをかけられて、葛藤の末呑む(時系列は友有が座にカチコミに行く前っぽい)

 

犬王は能の家に生まれ(父不在なので代表にもなったのだろう)民や貴族からの支持があり手元に置いておいた方がよいので友有を盾に飼い殺しにし、友有は幕府から見れば変わりがいくらでもいる琵琶法師なので追っ手から説得もなにもなかったのがつらくてよい。

 

このあと本編の最初に出て来た現代にいる琵琶法師が、成仏できないでいる友魚だったという伏線が回収され、本編中に友魚のお父さんの幽霊(切れてない)がでてきて「名前を変えてしまうと会いに行けなくなる」というワードを繰り返していたのですが、斬首の瞬間に友有が自分を友魚だと名乗ったせいで、死んでから犬王は友有を探していたのだが名前を変えてしまったので見つけられず、600年経ったその時にやっと再び出会えたというラストでした。

 

600年経てば怒りも溶けるし色々わかるだろうし気の合う人とだとツーカー現象は本当に起こったりもするのでもめずにわちゃわちゃしだしたのすごく良い。

 

生前、犬王は友有が幽霊になって、ぶつけに来るのが怒りでも会いに来てくれないかなって思いながら過ごしたのかなとかも思ったりらじんばんだり。

 

 

このラストが決定してての斬首時の友魚名乗りだったのかもしれないですが、犬王が権力に屈した(誤解なのであるが)ことでもう〝共に在り〟ではなくなってしまったから【友有】の名を捨て、友有としての自分を捨てるよう促し、自分のせいで兄弟子が喪われたことから何があっても元の座には帰れないので【友一】の名も捨て、自分の父が死ぬ原因を作った(なんやかんや竜の中将中にそれもわかった)足利さんちは俺の事も殺すんすねすごいっすね(乱暴な解釈)で【壇ノ浦の友魚】名乗りだったの無理がなくてほんとうによいとおもいました。

 

なんかとてもすごくよかった。

 

もし可能なら

・ワンピースで新しい手配書配られた時の遠く離れた身内のみんなみたいな感じで友有の活躍をクッソ喜ぶ兄弟子のシーン

・友有座のたまり場みたいなところに新規加入者がおずおずくる

・犬王の兄弟が加入するくだりとか練習風景

・和気あいあいシーン

 

などがもっとたくさんあると終盤、より観客の心が深く悲しく抉られるのでほしかったなって思いました。

 

悲しい話なんですけど、兄弟子の最期とか、最後まで友有に生き残るために諭し続けた座の偉い人、会食時に友魚が兄弟子の魚の骨を取ってあげるシーン、まだ異形だったころの犬王の舞に犬王の実家の楽士さんが即興で曲つけてあげたりとかほんのりみんなやわらかくやさしいのがとても印象に残りました。

なんともいえない読後感。

原作ちょっと読みたい。

 

とにかくアヴちゃんがかわいい。

アヴちゃんのショタボがマジでやばい。

魔性のショタ枠だ。

ポニーテールが蠱惑的なので禁止する校則を作った人の気持ちが少しわかるような気がします。

 

最後、再会して子供の姿に戻るシーンがあるんですがそのときに友有の目が治って(まっぷたつのおとうさんはなおっていたので子供もそうであってほしい)いたのかどうか見てなかったので劇場でもう一回みたいなーーって思っています。

 

 

 

欧州圏というかキリスト教圏というかとにかくあの辺には人が死んで祟るみたいな概念がないらしいのですが、海外の人々はこの話にどんな気持ちを抱くんだろうなとかちょっと興味ある。

呪いの面は悪魔とかにカテゴライズされてしまうのかなあと思うとちょっとモヤモヤしたり。

吹き替え版で良さが伝わらないと思うから字幕で見ろ、字幕以外絶許って思っている。